両立
- 吉澤 利仁
- 2021年2月22日
- 読了時間: 2分
先日東京銀座、京橋のほうにぷらっと行ってきて、用事ついでにそそくさと付近のギャラリーを見て回った。
ある現代絵画を取り扱う企画ギャラリーに入ると、ちょうど作家とギャラリストの方が話しをしていた。別に聞くつもりはなかったが、東京のギャラリーは狭く否応なしにも話しが聞こえてくる。
作家の方は去年のVOCA展に選抜された東京芸大出身の男性だった。
プロフィールには33歳となっている。
話しによると彼は24歳で大学を卒業し、それからはバイトをしながら制作を続けて、33歳にしてやっと転機が訪れたと言っていた。
バイトを辞めて故郷に帰り就職する道も考えたらしいが、それではきっと絵から遠ざかってしまうと思い、東京で9年間頑張ったと。
「就職したら負けのような気がして。ダメになった奴沢山見てきたから。」
続けて言う。
「画家はやっぱり仕事や家庭をかえりみてたら堕落しちゃうと思う。」
彼はいかにも苦労を重ねてきたような言い分だったが、私は率直に「楽してきたなぁ」と思った。
9年間もバイト生活で多くの時間を制作に費やせたのだから、言わば自分の好きな事を好きなだけやっていただけである。
これのどこが苦労なのだろうか?
周囲の人も彼は絵画に全てを捧げる芸術家だと勘違いしがちだが、これは明らかな間違い。
なぜなら就職しようが家庭を持とうが制作はできるからである。
もっと言えば就職し家庭を持ちきちんと人並みの生活ができる上で、制作も人並みにしてる事がほんとに難しく、その人の力量と情熱が問われてくる事だと思う。
確かに全てを両立させようとダメになってしまう人も沢山いる。
しかし全てを両立させ全てを一流にこなしている人もいる。
彼が言っているように職に就いたぐらいで、描かなくなるような気がするなら、放っておいてもいづれ描かなくなる。
ましてや絵を描く行為など人が生きて行く上で必須ではないのだから。
強い信念と覚悟がなければはなから無理である。
そろそろ「芸術家だから~しない」とかいう、その古臭い気質やめませんか?
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